IIA国際フレームワークとは?基礎から実務活用まで徹底解説
- 敏行 鎌田
- 42 分前
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近年、内部監査の役割は単なるコンプライアンスチェックから、リスクマネジメントや経営支援にまで広がっています。その中心に位置するのが、IIA(The Institute of Internal Auditors:国際内部監査人協会)が策定する「IIA国際フレームワーク」です。
本記事では、IIA国際フレームワークの概要から最新動向、実務での活用方法まで、専門的に詳しく解説します。
目次
IIA国際フレームワークとは?
IIA国際フレームワークの構成要素
IIA国際フレームワークの活用方法
2025年改訂版:グローバル内部監査基準(GIAS)とは?
IIA資格試験(CIA・CRMA)とフレームワークの関係
まとめ:IIA国際フレームワークを経営に活かすために
IIA国際フレームワークとは?
IIA国際フレームワーク(IPPF: International Professional Practices Framework)は、内部監査業務の国際的な標準を定めた体系です。内部監査人が一貫性と高品質を保ちつつ、組織に価値を提供できるよう設計されています。すべての内部監査活動のベースラインであり、グローバルな監査実務の共通言語となっています。
IIA国際フレームワークの構成要素
定義(Definition)と使命(Mission)
IIA国際フレームワークの定義
「組織の業務改善を支援するため、リスクマネジメント、コントロール、ガバナンスプロセスの有効性を評価・向上させる独立した保証・助言活動」
IIA国際フレームワークの使命
「内部監査の活動を通じて、組織の価値創造を促進すること」
核となる原則(Core Principles)
内部監査が効果的であるために満たすべき10の基本原則が定められています(例:誠実性、客観性、能力と勤勉性、リスクに基づくアプローチなど)。
原則 | 内容 |
誠実性を示す | 高い倫理観と誠実な行動を持って業務を遂行する |
客観的かつ公正な判断を行う | 利害関係から独立し、中立的な視点を維持する |
組織への責任を果たす | 組織の利益にかなう助言・保証を提供する |
適切な知識・技能・経験を有する | 必要な専門知識と能力を備え、継続的に研鑽する |
リスクに基づくアプローチを採用する | リスクに応じた優先順位を設定し監査活動を行う |
効果的なコミュニケーションを図る | 関係者との円滑かつ明確な意思疎通を実施する |
組織の改善に貢献する | 組織課題に対する建設的な助言を行い改善を促す |
組織の戦略目標に整合する活動を行う | 組織戦略に沿った監査活動を実施する |
組織のガバナンスを支援・強化する | ガバナンス機能をサポートし統制の向上に寄与する |
価値を創出し持続的に改善する | 監査活動を通じて組織価値を向上させ続ける |
職業倫理規定(Code of Ethics)
内部監査人の行動規範として、以下4つが求められます。
誠実性(Integrity)
客観性(Objectivity)
機密保持(Confidentiality)
能力(Competency)
国際内部監査基準(Standards)
必須基準(Mandatory Standards)と実施基準(Implementation Standards)に分かれ、監査活動の質を保証するための具体的ガイドラインです。
推奨指針(Implementation Guidance)
内部監査実務におけるベストプラクティスを提供し、柔軟な適用を促進します。
IIA国際フレームワークの活用方法
内部監査品質の向上
IPPFに準拠することで、内部監査部門の活動が体系化され、外部評価(External Assessment)においても高い評価を受けることができます。
事例:某グローバル製造業では、IPPFに基づく自己評価(QAIP)を導入した結果、外部監査人からの指摘件数が前年対比30%削減。
監査計画・実施・報告への適用
年間監査計画の策定(リスクベース)
実地監査におけるエビデンス収集と文書化
報告書作成における客観性・説得力の確保
2025年改訂版:グローバル内部監査基準(GIAS)とは?
IIAは2025年から、従来のIPPFを進化させた新体系「グローバル内部監査基準(GIAS: Global Internal Audit Standards)」を導入予定です。
主な変更点
原則重視型(Principles-based)から、行動指針型(Action-based)へ進化
ESGリスク、サイバーリスク等の新興リスク対応が重視
監査部門の独立性・組織内価値創出への寄与が強調
IIA資格試験(CIA・CRMA)とフレームワークの関係
CIA(公認内部監査人)試験やCRMA(公認リスク管理監査人)試験では、IIA国際フレームワークの理解が合格の鍵となります。
例
CIA Part1ではIPPFの理解が出題範囲の40%以上を占める
CRMAではリスクアシュランス活動の設計にIPPFの適用力が問われる
まとめ:IIA国際フレームワークを経営に活かすために
IIA国際フレームワークは、単なる内部監査部門向けのガイドラインではなく、組織全体のリスク管理力・ガバナンス品質を高めるための戦略的ツールです。
これを正しく理解・実装し、内部監査を経営支援型へと進化させることが、これからの企業に求められています。IIAフレームワークの理解と実践が、組織の持続的成長と競争優位確立の鍵となるでしょう。